大阪の中小企業がやるべき TikTok 採用 ─ 関西の現場で見た 3 つの型

「東京の手法をそのまま大阪に持ってきても効かない」。関西の中小企業 12 社で運用してわかった、地域性に合った TikTok 採用の 3 つの型を、実数値とともに分解する。

朝焼けの街並み ─ 大阪の現場が動き出す時間

― 「東京の手法をそのまま大阪に持ってきても効かない」。関西の中小企業 12 社で運用してわかった、地域性に合った TikTok 採用の 3 つの型。

§ 01 / なぜ「大阪・関西」を分けて考えるか

採用市場は地域差が大きい。同じ「TikTok 採用」と言っても、東京・関東圏で効くアプローチと、大阪・関西圏で効くアプローチは違う。これは現場で運用していて何度も確認してきた事実である。

具体的に何が違うか:

  1. 求職者の検索動機: 東京は転職市場が大きく、「キャリアアップ」「年収」が前面に出る。関西は「通勤距離」「家族との時間」「地元志向」が決定要因として強い。
  2. 企業の知名度の重み: 関西では「この会社、地元の◯◯駅の近くにある」という地理情報が、求人検索の入口になる。東京の「業界トップ」「上場」より、関西の「地域で 20 年やってる」の方が現場ワーカー職の応募率を上げる。
  3. 動画の文化: 関西の TikTok ユーザーはユーモア・関西弁・人柄を重視する傾向が顕著。東京風の「クールでスタイリッシュ」な動画は、関西では刺さりにくい。

当社は神戸登記・大阪を主な実務拠点として、関西の中小企業 12 社で TikTok 採用を運用してきた。本記事では、その中から導かれた 「関西で効く 3 つの型」 を提示する。

§ 02 / 型 1 ─ 通勤動線の可視化

関西の中小企業の現場ワーカー職 (運送・介護・飲食・小売) で最初に効くのが、「通勤動線」を動画で可視化する 型である。

実装例:

  • 最寄り駅 → 会社までの徒歩 5 分」を実際に歩いて撮る
  • 車通勤の場合の駐車場と入口」を映す
  • バイク通勤者の駐輪場」「自転車置き場」も入れる

なぜ効くか: 求職者が 応募する前に最大に不安なのが「通勤できるか」 だから。「最寄りは JR 大阪駅から 1 駅、徒歩 5 分」と書くだけより、実際に歩いてる動画 30 秒の方が応募率が 1.8 倍 に上がった (n=4 社平均)。

大阪市内の中小企業 D 社 (印刷業、従業員 45 名) のケース:

  • 動画タイトル: 「淀屋橋駅から徒歩 7 分、こんな道です」
  • 30 秒の歩く映像 + 信号 1 つ越える/コンビニ前/会社の入口
  • 投稿後 2 週間で 12 件応募 (前月は Indeed 経由で 3 件)
  • 応募者の 80% が「動画で通勤路を見て安心したから応募した」と回答

東京の Z 世代採用記事ではほとんど扱われない論点だが、関西の現場ワーカー職では 最も投資対効果の高い動画フォーマット

§ 03 / 型 2 ─ 関西弁のトーンを残す

これは技術的というより文化的な型。社長やスタッフの関西弁を編集で「整える」のではなく、そのまま残す 設計である。

東京の制作会社が関西の企業の動画を作ると、しばしばナレーションを標準語に変えたり、関西弁の言い回しを字幕で「翻訳」したりする。これは関西の求職者には 逆効果 になる。

理由: 関西で働きたい人は、関西文化への帰属意識がある層が含まれる。標準語に整えた動画は「遠い大企業っぽい」と感じられ、関西の地元中小企業の魅力 ─ 距離感の近さ、人間味 ─ が損なわれる。

大阪府堺市の食品製造業 E 社 (従業員 110 名) では、社長インタビュー動画を 2 パターン作って A/B テストした:

  • A: ナレーション・字幕すべて標準語、社長の関西弁を字幕で「翻訳」
  • B: 社長の関西弁をそのまま、字幕も関西弁のまま

結果:

  • A: 再生数 320 / 応募 1 件
  • B: 再生数 580 / 応募 6 件

B の方が 再生数 1.8 倍、応募率 6 倍。コメント欄には「社長おもろい」「関西の会社って感じで安心する」といったコメントが並んだ。

ポイントは、関西弁を ふざけて使う のではなく 自然体で使う こと。意図的なお笑い演出ではなく、普段通りに話してもらう。それが関西の求職者には伝わる。

§ 04 / 型 3 ─ 「地元の知名度」を前面に

関西の中小企業の強みは、「業界 1 位ではないが、地元 30 年」 のような地域での歴史・信頼性である。これを動画でアピールする型。

具体例:

  • 創業 1985 年、大阪市生野区に根ざして 40 年
  • 取引先の◯◯ホテルさんとは 25 年のお付き合い」(地元の有名施設名を挙げる)
  • 従業員の 60% が地元出身
  • 地域の祭りに毎年協賛

なぜ効くか: 大阪・神戸の求職者の多くは、地元で長く働ける会社 を探している。「上場予定」「IPO 目指す」よりも、「今後も地元でやっていく安定性」の方が強い決め手になる。

兵庫県明石市の物流会社 F 社 (従業員 78 名) では、これを軸にした動画を 3 本投稿:

  • 明石で 38 年、地元のドライバーが集まる会社
  • 従業員家族も明石・神戸在住が 9 割
  • 明石市内の◯◯小学校の通学路の安全活動に参加してます

3 ヶ月後:

  • 月間応募数: 8 件 → 22 件
  • 応募者の地元率 (明石・神戸・加古川): 35% → 78%
  • 採用後 6 ヶ月の定着率: 過去 12 ヶ月平均 72% → 100% (n=5)

「地元採用 × 地元定着」のループ が回り始めた。これは東京の大規模 IT 企業の採用とは全く違うゲームである。

§ 05 / Caveats ─ 大阪・関西で TikTok 採用が向かないケース

3 つの注意点:

第一に、業界によって効かない。経験者中途採用 (エンジニア / 士業 / 専門職) では、関西でも LinkedIn や Wantedly のほうが ROI が高い。TikTok が効くのは現場ワーカー職と若年層採用に偏る。

第二に、極端な「お笑い狙い」は外す。関西 = お笑い文化 と短絡的に考えて、ふざけた動画を作ると逆効果になる。求職者は「真面目に働ける場か」を見ている。ユーモアは自然体の中に「滲み出る」程度がベスト。

第三に、「東京っぽい撮影クルー」を呼ぶと文化が崩れる。動画制作を東京の制作会社に丸投げすると、上記 3 つの型のいずれも実装しにくい (彼らは関西文化を理解していないから)。関西の現場を理解しているチーム、または 社内内製 が望ましい。

§ 06 / Closing ─ 採用は地域文化の出力である

大阪・関西の中小企業にとって、TikTok 採用は 「東京の手法を真似る場」ではない。むしろ、地域性そのものをコンテンツ化するチャンス である。

通勤動線・関西弁・地元の歴史。これらは東京の大企業が真似できない、関西の中小企業だけが持つアセットだ。

媒体は手段、目的は 「働きたい人と、働ける現場を、地元の言葉で繋ぐ」 こと。それさえぶれなければ、TikTok 採用は関西の中小企業にとって最強の採用チャネルになる。


本記事の数値は実在の運用案件を匿名化・抽象化した集約値で、複数案件の傾向を代表する例示として記述しています。

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