介護業の TikTok 採用 ─ 共感型動画で応募を増やす 3 つの型

「介護の現場の本音を、求人広告に書けない」を解く。介護事業者 5 社で運用してわかった、応募者の「家族の心配」と「やりがい」を同時に動かす動画の型。

朝焼けの街並み ─ 介護現場が動き出す時間

― 「介護の現場の本音を、求人広告に書けない」を解く。介護事業者 5 社で運用してわかった、応募者の「家族の心配」と「やりがい」を同時に動かす動画の型。

§ 01 / 介護業界の採用の現実

2026 年現在、日本の介護業界の有効求人倍率は 3.95。介護福祉士に限れば 4.20 を超える月もある (厚労省、最新公表値)。これは「応募者 1 人を 4 社が奪い合う」状態を意味する。

関西の介護事業者から相談を受ける時、決まって出てくる言葉:

「Indeed に毎月 30 万円かけても、応募が 2 件しか来ない」 「来てくれた人も、面接の段階で他社に取られる」 「給料を上げる以外、手が無い気がする」

しかし給料を上げる戦略には限界がある。介護報酬の構造上、人件費を 10% 上げると経営が立ち行かなくなる。

ここで TikTok 採用が、構造的なゲームチェンジャーになる。

§ 02 / なぜ介護業界に TikTok が効くか

3 つの構造的理由がある。

(1) 介護職を考える層は SNS ネイティブ: 20-40 代女性 (介護職の最大セグメント) は TikTok アクティブ率が極めて高い。求人サイトを見る前に、TikTok で「この業界で働く人の実態」を調べる動線が一般化している。

(2) 「動画で見ないと判断できない」業界: 介護の現場は、写真と文字では伝わらない。利用者との接し方、職員同士の関係性、施設の雰囲気 ─ これらは動画でしか正確に伝わらない。求人原稿で「アットホーム」と書いても、求職者は信じない。動画なら 30 秒で判断できる。

(3) 競合事業者がまだ参入していない: 2026 年現在、介護業界全体で TikTok 採用に本格参入している事業者は 業界の 5% 未満。先行者利益が大きい。

§ 03 / 型 1 ─ 「1 日のリアル」を編集なしで見せる

介護職に応募する人が最も知りたいのは、「実際にどんな 1 日を過ごすのか」

  • 朝のミーティング (5 分の様子)
  • 利用者との朝のやり取り
  • 昼食介助の場面
  • 午後のレクリエーション
  • 夕方の申し送り

これらを 30 秒×7 本 に分けて投稿。1 本ずつ短く、編集を最小限にする。「綺麗に見せる動画」は逆効果。リアルな業務の流れを淡々と映す方が、応募者の信頼を得る。

兵庫県西宮市の介護施設 J 社 (デイサービス、定員 30 名) では、これを 2 ヶ月続けた結果:

指標 介入前 2 ヶ月後
Indeed 月間予算 ¥250,000 ¥120,000
月間応募数 2 件 14 件
採用単価 (CPA) ¥130,000 ¥38,000
採用後 6 ヶ月定着率 50% (n=2) 90% (n=10)

定着率の上昇が特に重要。動画で施設の実態を見て応募してくる人は、入社後のギャップが少ない。「思ってたのと違った」で 1 ヶ月で辞めるパターンが激減する。

§ 04 / 型 2 ─ 職員の家族・友人へのメッセージ動画

応募者の 背中を最後に押すのは家族。介護職に応募する人の 60% 以上が、「家族に反対されないか」を不安要素として挙げる (当社の応募者アンケート、n=312)。

これを動かすのが、職員自身が家族・友人に向けて話す動画

例:

  • 「お母さん、わたしが介護の仕事を選んだ理由」
  • 「友達に介護職を勧めるなら、こう伝える」
  • 「介護の仕事を始めて、家での会話が変わった話」

職員本人が、カメラに向かって 90 秒〜 2 分話す。スクリプトは作らない。素のままの感情を映す

大阪市内の特養 K 社 (従業員 75 名) では、30 代女性介護福祉士 1 名が「私が介護を選んだ理由」を語る 1 分動画を投稿。視聴者の 42% が動画を最後まで見て、コメント欄に「自分も介護を考えてる」「家族が反対してて悩んでる」というコメントが 20 件以上 ついた。

この動画から 3 ヶ月で 8 件の応募 (うち 6 件は「動画を見て家族と話して、応募を決めた」と回答)。

家族の心配 ─ 業界の闇のイメージ、シフトの不規則、給与の低さ ─ を 正面から扱う動画 は、業界の他社が真似できない強力な差別化になる。

§ 05 / 型 3 ─ 利用者ご本人 or ご家族の声 (許諾済み)

これは難易度が高いが、効果が最大の型。

利用者ご本人、またはご家族から、「この施設に通って (入居して) どう変わったか」 を語ってもらう動画。

撮影前に必須:

  • ご本人・ご家族からの 書面での撮影・公開許諾
  • 個人特定情報のマスキング (フルネーム → イニシャル、施設名 → 一般化、等)
  • 動画公開前のご家族レビュー (修正可能な状態で見せる)

倫理的に細心の注意を払う前提で、これが実装できたとき、効果は劇的になる。

兵庫県神戸市の有料老人ホーム L 社 (定員 60 名) では、ご家族 1 名から「母が入居してから 1 年、面会のたびに笑顔が増えた」という 2 分動画を許諾。投稿後 1 週間で:

  • 再生数: 8,400 (通常の 12 倍)
  • 求人ページへの遷移率: 8.2% (業界平均 1.5% の 5 倍)
  • 応募数: 17 件 (月間平均 5 件の 3.4 倍)
  • 入居問合せ (採用とは別): 6 件 (副次効果)

応募者からは「ご家族の声を直接聞ける施設は信頼できる」というコメントが多く寄せられた。

注意: この型は 必ず倫理的に正しい手順 で行うこと。撮影許諾が口頭だけ、編集後の確認なし、というやり方は絶対に避けるべき。介護業界は信頼で成り立つ業界であり、1 度のミスで全てを失う。

§ 06 / 介護 × TikTok 採用の落とし穴

3 つだけ注意点を挙げる。

第一に、医療職 (看護師・PT・OT) には別アプローチが必要。介護職と看護職は応募動機が違う。看護師は 専門性・キャリア・最新医療 に反応するため、TikTok の「リアルな現場」より、Wantedly や転職媒体の方が ROI が高い。

第二に、業務時間内の撮影は計画的に。介護現場は常に人手不足。撮影クルーが来て業務が止まるのは現場に大きな負担。撮影は職員 1-2 名が スマホで自撮り する方式が現実的。

第三に、コメント対応に体制を作る。動画が伸びると、コメント欄に応募相談・施設見学希望・家族からの問合せが急増する。1 週間以内に返信できる体制 を整えてから運用開始するべき。返信が遅いと逆効果になる。

§ 07 / Closing ─ 介護業界の採用は、信頼の蓄積である

介護職の採用は、求人広告の「条件で釣る」ゲームではない。

応募者本人とその家族、そして実際の利用者・ご家族 ─ この 3 つの信頼層 を、動画というメディアで繋ぐことが、長期的に勝てる介護採用の構造である。

TikTok は、「言葉では伝わらないこと」を伝える のに最適なメディア。介護業界はそういう業界だ。だからこそ TikTok 採用は、介護業界にとって最も効果的な採用チャネルの一つになる。

人手不足は、媒体購入では解けない。信頼を積み上げる動画運用 で、応募と定着の両方を構造的に変えることができる。


本記事の数値は実在の運用案件を匿名化・抽象化した集約値で、複数案件の傾向を代表する例示として記述しています。撮影許諾と倫理は最優先で運用しています。

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